住民税の納期の特例とは?普通徴収と合わせて説明します
1,概要
個人住民税とは?
都道府県や市区町村が住民に対して行う行政サービスに必要な経費を、住民の方々に住民税という形で分担してもらうものです。一般に、「個人都道府県民税」と「個人市区町村民税」をあわせて「個人住民税」と呼ばれています。
個人住民税の納付方法とは?
納付方法は、「特別徴収」と「普通徴収」があります。
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- 普通徴収とは、納税者が直接税を納める方法です。
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- 一方、特別徴収とは、給与天引き制度のことです。
事業主(給与支払者)が、従業員の方(納税義務者)の給与から個人住民税を天引きし、従業員の方に代わり納税する制度です。特別徴収の場合、毎月納付するので、年12回納付することになります。
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- 特別徴収の住民税を年に12回納付することは、零細企業の負担になるため、納期の特例制度により年2回の納付で済ませることが認められています。
2、給与から天引きされる住民税の納付方法
(1)個人住民税の納付方法
地方税の一種である個人住民税とは、その名前の通り、個人が負担する地方税です。そして、個人住民税の徴収方法には、「普通徴収」と「特別徴収」の2種類あります。
①特別徴収
給与所得者の所得に係る住民税については、給与等の支払者である会社や事業者が毎月の給与から住民税を天引きして、受給者の代わりに国や自治体に納付することになっています。この制度を特別徴収制度といいます。
②普通徴収
上記①以外の方については、市区町村から送付される納税通知書で、年4回に分けて納めます。これを「普通徴収」といいます。
※個人住民税は1月1日現在に納税義務者の居住する市区町村が、賦課徴収を行っています。
(2)個人住民税の特別徴収の仕組み
事業主は、住民税を特別徴収という形で、給与から天引きするよう義務付けられています。特別徴収の対象者は、正社員をはじめとし、アルバイトやパート、短期雇用者、役員など雇用形態問わず、すべての人が該当します。
個人住民税は、前年の1月から12月までの個人の所得に対して課税されます。そして、特別徴収の場合は、毎年6月から翌年5月にかけて個人住民税を納付します。
3,個人住民税の特別徴収の納付までの流れ
(1)「給与支払報告書」の提出
天引き義務のある事業所は、前年1月から12月までの1年間の、各従業員の給与支払額を「給与支払報告書」にまとめ、市区町村に1月31日までに提出することが義務付けられています。
(2)特別徴収税額通知書の送付
上記①の「給与支払報告書」提出後、各市区町村で住民税額が計算されます。そして、従業員ひとりひとりの住民税額が、毎年5月31日までごろに「特別徴収税額決定通知書」が事業所に送付されます。
(3)個人住民税の天引き
上記②の「特別徴収税額決定通知書」には、各従業員ごとの住民税の年額税と月額税が記載されています。事業主はそれに基づき、6月分の給与から翌年の5月分の給与まで、毎月の給与から個人住民税の天引きをします。
(4)個人住民税の納付
各従業員の給与から天引きした住民税額は、原則、毎月の給与支払い日の翌月10日までに納付しなければいけません。納付書を使って金融機関、もしくは市区町村の窓口で納付します。電子納付も可能です。
4,特別徴収住民税の納期特例
(1)原則的な納付方法
特別徴収税額は、原則、毎年6月から翌年5月にかけて個人住民税を納付します。つまり、年12回に分けて納付することになっています。しかし、人手が不足しがちな小規模企業にとっては、毎月1回金融機関などへ出向き、納税することは負担が大きいです。そこで下記②の「納期の特例」という制度が設けられています。
(2)納期の特例
納期の特例とは、給与支払いを受ける従業員が常時10人未満の事業者のみが利用できる制度です。この制度が適用された場合は、年2回、半年分をまとめて納付することができます。
具体的には、
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- 6月から11月に従業員から徴収した個人住民税は・・・12月10日が納期限、
- 12月から5月に従業員から徴収した個人住民税は・・・6月10日が納期限
となります。
※納期限が土・日曜日、休日の場合は、その翌日が納期限になります。
ただし、納期の特例はあくまでも納期に関する特例であり、事業主は従業員から毎月住民税を徴収する必要があります。
(3)納期の特例の申請手続き
特例の適用を受ける場合は、「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」に一定の事項を記載し、各市区町村の特別徴収担当部署に提出します。提出時期は定められてないので、提出した月の翌月に支払う給与等から適用されます。
(4)納期の特例の要件
納期の特例を受けるための条件は、下記の通りです。
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- 給与の支払いを受ける者が常時10人未満であること
- 当該市町村において滞納がないこと
- 納期の特例の取り消しを受けて1年以上が経過していること
5,まとめ
住民税の特別徴収税額の納期の特例は、住民税の特別徴収義務者である事業者が、一定の条件を満たせば、市町村長の承認を受けることにより、特別徴収税額を年2回に分けて納入することができます。
納期の特例の適用を受けると、具体的には、6月~11月分までの6ヶ月分を12月10日まで、12月~翌年5月分までの6ヶ月分を6月10日まで、の年2回に分けて納付することができます。
納期の特例を受けようとする事業主は、事前に申請する必要があります。
監修者:有限会社 経理まるごと.com 代表税理士 渕上 肇