賃貸用不動産の取得価額に算入するものしないもの
1.概要
賃貸用不動産を購入した際は、本体価格のほかに様々な支出が伴いますが、その支出はその年度での必要経費としてよいものと、不動産の取得価額に含めるべきものがあります。
取得に含めて資産計上した場合には、建物の場合は「減価償却」を通じて耐用年数の各期間にわたって損金となります。
しかし、建物の耐用年数は最長50年と長く、全部が費用になるには長期の時間がかかることになります。また、土地の場合は減価償却そのものがありませんので、売却時まで費用にはなりません。
2.取得価額に算入しなければいけないもの
取得価額には、購入代価とその資産を事業の用に供するために直接要した費用が含まれます。
賃貸用不動産を取得した場合には、以下のような費用は取得価額に算入しなければいけません。
(1)取得に伴う仲介手数料
不動産業者に支払う仲介手数料は取得に必要な費用ですので、必ず取得価額となります。土地建物を一括して購入した場合の仲介手数料は、合理的な区分で按分して、それぞれの取得価額に計上する必要があります。
この按分については、下記4.注意事項をご参照ください。
(2)固定資産税精算金(未経過固定資産税)
売却の相手方に支払った「固定資産税精算金」は、不動産購入のために必要な費用として買主から売主へ支払われるため、土地や建物の売却価額の一部となり、取得価額に算入します。
※「固定資産税精算金」とは、引渡し以降の「固定資産税相当分」を日割精算して、買主が負担するものです。
固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産保有者に課税されます。年途中で保有者が変わっても、納税義務者は変わりませんので、期の途中に売却した場合であっても、売主が一年分を全額納税します。そのため、売買して引渡し以降の固定資産税は、売却時に「買主が売り縫いへ支払う」のが慣習となっています。
(3)取得に伴う立退料
不動産の取得に伴い立退料が必要となった場合には、取得価額に算入します。
(4)土地上の建物等の取り壊し費用
土地を取得するために、その土地にもともとあった建物等を取り壊しする場合の費用は、土地の取得価額になります。
(5)建物の設計料
建物を注文建築するときの設計料も取得価額になります。設計変更などがあって不採用となったものについては、経費にしてかまいません。
(6)地鎮祭・上棟式
建物が完成するまでに支出されるこれらの費用は建物の取得価額となります。
3.取得価額に算入しなくてもよいもの
次のものは、必要経費として認められます。
(1)次のような租税公課
不動産取得税、登録免許税、収入印紙、
(2)借入金の利子
固定資産の取得のための借入金の利子は、使用開始前の分も費用にできます。
(3)司法書士報酬
登記のための司法書士の報酬は、登録免許税等と同様に一種の事後的費用であり、取得価額に算入しても良いし、しなくても良いとされています。
(登記関連費用は、あくまで第三者対抗要件を具備するための費用であって、取得に要した費用とは言えないためです。)
(4)落成式・竣工式など建築完成披露のための支出
これらの建物完成後に支払う費用は、固定資産取得後に支払う費用ですので、取得価額に含めなくてかまいません。
(5)火災保険・地震保険料
これらは期間の経過に応じて費用となりますので、取得価額に含めなくてかまいません。
4.注意事項
購入時に支払う仲介手数料などの土地と建物双方に係る支出については、合理的な比率で按分しそれぞれの取得価額に参入します。この場合の合理的な比率は、土地と建物の購入価額の比や固定資産評価額の比などを用います。
仲介手数料のうち建物の取得価額に含めるべき支出については、毎年の減価償却により必要経費となります。
仲介手数料のうち土地仲介手数料は償却できません。土地仲介手数料の勘定科目は「土地」ですが、消費税上は課税仕入となります。
執筆者:税理士 渕上 肇