支払調書とは?フリーランスとの関係について解説
1、支払調書とは?
支払調書とは、例えば企業がフリーランスの方に業務を発注して報酬を支払った場合に、報酬等の支払者が支払った報酬や料金、源泉徴収税額を記載し作成する書類のことです。
正式には、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」といい、報酬等を支払った者は、毎年1月31日までに所轄税務署長へ提出する義務があります。
国税庁が「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」で示している支払調書は次の4種類です。
①報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
②不動産の使用料等の支払調書
③不動産等の譲受けの対価の支払調書
④不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
2,支払調書が必要な理由
税務署は、支払調書発行義務者から支払調書を受け取ることで、報酬が誰から誰にいくら支払われたのかを把握できます。報酬を受け取った側の申告書の内容と、支払調書の内容とを突き合わせることで、申告内容が正しいかを確認しているのです。
また、源泉徴収対象取引である場合には、正しく源泉徴収がなされているかという点も重要になります。源泉徴収対象取引であるのに、正しく源泉徴収がなされていなければ、源泉徴収義務違反として、支払者に罰則が課せられる場合があります。
3,支払調書を受け取るタイミング
フリーランスは、前年(1月1日~12月31日)に仕事を受託したクライアントから、翌年の1月末までに支払調書を受け取ることが一般的です。この支払調書は、所得税の確定申告に利用します。
支払側は翌年1月31日に間に合わせるように支払調書を作成し、同時にフリーランスに送付するのが一般的です。送付時期はクライアントによって異なります。通常は、12月から1月に手元に届くスケジュールで発送されることになります。
4,支払調書の作成対象となる報酬
フリーランスとして下記の業務を行い報酬を受け取った場合は、源泉徴収の対象になります。その場合、源泉徴収された税額は、確定申告書に記載する必要があります。
①原稿料、講演料など
②デザイン料、イラスト料など
③翻訳、通訳の報酬
④弁護士、司法書士などに支払う報酬
⑤映画、テレビなどへの出演料
5,支払調書の内容
支払調書には、下記の内容が記載されます。
①支払者の情報(会社名や住所)
②受取者(フリーランス)の情報
③支払金額(報酬や料金)
④源泉徴収税額(差し引かれた所得税)
(クライアントが税務署に提出する支払調書のみマイナンバー欄を記入することになっており、受給者が受け取る支払調書には原則としてマイナンバーが記載されないことになっています。)
源泉徴収税額は原則として「支払額の10.21%」です(復興特別所得税を含む)。
例:報酬が100,000円の場合
源泉徴収税額:100,000円 × 10.21% = 10,210円
実際に振り込まれる金額:100,000円 – 10,210円 = 89,790円
6,確定申告での利用
支払調書は、確定申告時に収入額を正確に計算するための重要な情報源となります。受け取った支払調書の内容を確認し、自分で記帳した帳簿と照らし合わせることで、報酬額と源泉徴収額の正しい把握ができます。源泉徴収された金額は、確定申告を通じて税額調整が行われ、還付を受けられる場合があります。
確定申告の時期にまとめて帳簿付けをするケースでは、支払調書は大変便利な資料となります。
なお、取引相手から支払調書を受け取っても、確定申告書には添付する必要はありません。
(支払者が税務署へ提出することになっています。)
7,支払調書が発行されない場合
支払者は、税務署への申告のために支払調書を作成しますが、フリーランスに対し交付する義務はありません。そのため、支払者によっては支払調書を発行してくれない場合もあります。
支払調書を受け取れない場合でも、フリーランス側は自分の収入記録(請求書や振込明細など)をもとに確定申告を行う必要があります。
クライアントから支払調書が発行されない場合は、代わりに支払明細書を発行してもらい保管しておくようにしましょう。なお、支払明細書を受け取ったら、源泉徴収税額が記載されているか必ずチェックしましょう。
8,注意点
フリーランスとして仕事をしたからと言って、必ずしも源泉徴収されるとは限りません。取引の種類によっては源泉徴収が不要な場合があります(プログラマーなど)。
支払調書に源泉徴収額が記載されていない場合は、そのまま収入額として申告します。
また、フリーランスは複数のクライアントと取引をしていることが多いため、各クライアントからの支払調書を適切に管理する必要があります。
9,まとめ
支払調書は、フリーランスが受け取った報酬や源泉徴収税額を明確にする重要な書類です。
しかし、クライアントから必ず交付されるわけではないため、自身で収入を管理する能力が求められます。
確定申告を通じて、源泉徴収された税額が還付される場合が多々ありますので、自分自身の源泉徴収税額は、正確に把握しておく必要があります。
税務処理を適切に行うためには、支払調書だけでなく、自分の記録(請求書・領収書など)も大切に保管することが重要です。