新NISAとは?NISAの制度変更について簡潔に説明します

1,NISAの制度変更について

 2023年(令和5年度)の税制改正大綱で、2024年からの新NISAのスタートが決定されました。旧NISAは非課税で個人の投資を支援する制度ですが、運用期間の制限や非課税枠の小ささなど、使いづらい点がありました。

 しかし新NISAではそれらがほぼ全て改善され、これまでの旧NISA制度と同じように非課税枠を使って投資できる利点はそのままに、投資枠を拡大し、非課税期間も無期限になるなど、使い勝手が大幅に良くなりました。

新NISAの制度上の特色は、次の通りです。

  • 年間投資枠の360万円への拡大
  • 「積み立て投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能
  • 非課税保有期間の無期限化
  • 生涯投資枠1800万円の設定
  • 保有枠は再利用可能

 

2、そもそもNISAとは

 NISA(少額投資非課税制度)とは、2014年にスタートした個人の資産運用を応援する税制優遇制度です。株式や投資信託で得られた利益が非課税になる制度です。

以下で、具体的に説明します。

 

①運用益・配当の非課税

 株式や投資信託を通常の課税口座で取引をすると、配当や利益に対して20%(現在は復興特別所得税があるので20.315%)の税金がかかります。

一方、NISAは株式や投資信託から得られる配当や売却益は、一定期間内であれば(新NISAは無期限)非課税となります。これがNISAの最大のメリットです。配当や売却益が一切非課税というのは資産形成の上で大きなメリットです。

 NISAでは、年間の非課税投資枠は決まっていますが、その範囲内なら何度も売ったり買ったりできます。ただし、非課税枠は単年度ごとにリセットされるため、ある年に使い残した枠はその年度で消滅します。

 

②3つのNISA

 当初2014年に、NISAは非課税運用額が年間100万円でスタートしました。制度開始から2年たった2016年に年間120万円に引き上げられ、さらに「ジュニアNISA」が始まりました。

 2018年には「つみたてNISA」がスタートしました。種類が増えたことによって、当初のNISAは「一般NISA」と呼ばれるようになりました。

 

③確定拠出年金(DC、iDeCo)の違い

 NISAは、確定拠出年金(DC、iDeCo)と異なり、使途が自由でいつでも売却して引き出しできるのが特徴です。DC 、iDeCoは、自由に引き出すことはできません。

 一方、DC 、iDeCoの掛け金は所得から控除されるので、その分、所得税や住民税を軽減する効果がありますが、NISAの掛け金については所得控除できません。

 

④所得税との関係

 NISA口座の取引は、確定申告が不要です。

ただし、デメリットとしては、NISA商品は元本保証がなく損失が発生しても損益通算出来ません。さらに、確定拠出年金(DC、iDeCo)と異なり、掛け金を所得控除できません。

 

3,新NISAと旧NISAの違い

①旧NISAの概要
 旧NISAは、2023年末までとなります。旧NISAでは、投資信託やETFの積立をする「つみたてNISA」と、株やETF、REIT、投資信託を買える「一般NISA」に分かれています。

「つみたてNISA」は非課税期間が20年間で、年間投資枠は40万円までです。「一般NISA」は非課税期間が5年間で、年間投資枠は120万円までとなります。

そして、つみたてNISAと一般NISAの併用はできません。どちらか一方しか利用できません。

さらに、保有している投資信託や株などを売却しても、非課税投資枠の再利用はできません。

 

②新しいNISAの概要

 旧「つみたてNISA」が「積み立て投資枠」に、旧「一般NISA」は「成長投資枠」という名称になり、併用可能になりました。これまでは、つみたてNISAと一般NISAは併用できませんでしたが、「積み立て投資枠」と「成長投資枠」は、併用できます。

 「積み立て投資枠」で1年間に投資できるのは120万円、「成長投資枠」の年間投資枠は240万円となります。

 非課税期間は無期限となります。

ただし、非課税保有枠は買付残高1800万円までとなります(うち成長投資枠は1200万円まで、つみたて投資枠は非課税保有枠内なら限度額なし)。

保有している投資信託や株などを売却した場合、売却した翌年には非課税保有枠を再利用できます。ただし、年間投資枠は再利用できません。

 

 

4,新しいNISAのメリットとは

 

①年間投資枠が大幅に拡大

 旧NISAでは、一般NISAの年間投資枠が120万円です。

 一方、新しいNISAの成長投資枠では、年間投資枠が240万円に拡張され、より多くの株などに投資ができるようになりました。

 また、旧つみたてNISAにおける年間投資上限額は40万円ですが、新しいNISAでは、「つみたて投資枠」が年間120万円に拡大されました。従来の3倍に増えています。

 

②「積み立て投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能

 新しいNISAの一番大きな変更点として、旧NISA制度では、一般NISAとつみたてNISA、ジュニアNISAがあり各制度を併用することはできませんでした。

 しかし、新NISAではつみたてNISAが「つみたて投資枠」、一般NISAが「成長投資枠」という2つの枠に変更になり、両者を併用できるようになります。(ジュニアNISAは、廃止となりました。)

これにより、NISA内で「つみたて投資枠」で投資信託の積立をしながら、「成長投資枠」で株などを買うことが可能になりました。

(なお、成長投資枠で投資信託の積立投資を行うこともできます)。

 

③非課税保有期間の無期限化

 非課税期間については、一般NISAは最長5年、つみたてNISAは最長20年であったものが、新NISAでは無期限となります。

非課税期間が無期限となり、期限や出口戦略を気にすることなく投資できるようになります。

 また、これまでの一般NISAでは非課税保有期間が終わる5年後には、売却かロールオーバーの手続きが必要でしたが、新NISAではこれらの手続きが不要になります。

 

④生涯非課税保有枠の引上げ

 旧NISAでは、つみたてNISAは年間40万円×20年間=800万円、一般NISAでは年間120万円×5年間=600万円が非課税の保有限度額でした。

 これが新NISAでは合計1,800万円と大幅に引上げられます。ただし、その1,800万円のうち成長投資枠で投資できるのは1,200万円までという制限があります。

 なお、新NISA制度での生涯非課税限度額は、旧制度と別枠とみなされます。現行NISA制度を利用している方も、2024年から限度額ゼロでスタートできるので、現行NISA制度を利用しているからといって不利になるようなことはありません。

 

⑤保有枠は再利用可能に

 旧NISA制度ではNISA口座で保有している金融商品の換金手続きをした場合、その金額分を再利用することは認められませんでした。

 新NISAでは一人あたり1,800万円を上限として「生涯投資枠」が設けられます。

この非課税保有枠は翌年に再利用できます。新NISAでは生涯非課税限度額の上限まで商品を保有していたとしても、保有している金融商品を売却すると、翌年に非課税枠が復活し、その空きを再利用して新たな商品を購入可能です。

 

5,新NISAのデメリットとは

①損益通算・繰越控除・所得控除ができない
 一般口座の取引であれば投資の利益と損失を相殺することができますが(損益通算)、NISA口座の取引は他の課税口座とは損益通算ができません。

 また、発生した損失を翌年に繰り越すこともできません。

さらに、上記2,③④で説明したとおり、掛け金を所得控除できません。

 

※1損益通算とは、譲渡益などの利益から、譲渡損などの損失を差し引くことができる制度です。

※2繰越控除とは、その年に控除しきれなかった損失を、最長3年間にわたって利益と通算できる制度です。

 

②成長投資枠の対象商品が限定される

 新NISAの成長枠では、一定の条件に該当する銘柄が対象外となる見込みです。

 一般NISAでは信託期間や分配方式への制限がなかったため、これまで非課税で投資できていた投資信託も2024年以降は対象から外れる可能性があります。

 

③口座を開設できるのは18歳以上のみ

 新NISAで口座開設ができるのは、口座開設を行う年の1月1日時点で18歳以上の人に限られます。2023年までは、ジュニアNISAを活用して未成年でも非課税で投資ができましたが、新NISAでは未成年を対象とした非課税制度は設けられていません。

 

④旧NISAでのつみたてNISA・一般NISAから商品を引き継げない

 2023年までの一般NISAでは、非課税期間満了の際にロールオーバーという手続きを行うことで、非課税期間の延長が行えました。しかし、2024年スタートの新NISAは、旧NISAとは別の制度となりますので、ロールオーバーが行えません。

 したがって、2023年末までに購入した一般NISAの残高は、非課税期間満了までに売却するか、課税口座へ移管するかを選択しなくてはなりません。

 

6,まとめ

 旧NISAには期限があったので、その年の非課税枠を全部使い切るスタイルになりがちでした。しかし、新しいNISAでは、非課税投資枠がかなり大きくなり、期限制限もなくなりました。

 そのため、無期限の長期投資も可能となるなど、個々人の状況に応じて柔軟に投資がしやすくなったといえます。

 なお、長期間にわたる複利運用では、手数料の差も投資利回りへの影響を通じて複利で影響します。そのため長期投資の場合には、信託報酬など運用管理手数料には注意が必要です。

 

執筆者:税理士 渕上 肇