セルフメディケーション税制とは?

セルフメディケーション税制とは?

1.セルフメディケーション税制の概要

 

医療費で減税される制度としては、1年間の医療費合計が10万円を超えた場合などに適用される「医療費控除」があります。

 

この従来の医療費控除に加えて、2017年1月に「セルフメディケーション税制」が創設されました。この制度は、健康の維持・増進や病気の予防を目的に、日常的に健康管理を行う人を支援するための税制優遇措置です。

セルフメディケーション税制は、ドラッグストアなどで対象の成分が含まれる医薬品を年間12,000円以上購入した場合、超えた金額分が所得から控除され、その分の所得税・個人住民税が軽減されるというものです。

 

ただし、このセルフメディケーション税制は、通常の医療費控除との選択適用となります。この制度の適用を受ける場合には、通常の医療費控除を受けることができないので、注意が必要です。

 

2.セルフメディケーションとは

身体の不調や健康への不安を感じたときだけでなく、日ごろから病気を予防し、健康の維持増進や管理をすることは、健康な生活を維持するために大切なことです。
自分の身体を自分で守るセルフケアの考え方は、超高齢社会における健康寿命の延伸や社会保障制度の維持、医療費の抑制という観点からも大切なことです。

 

セルフメディケーションとは、自分自身の健康に責任を持ち、軽度の病気やケガの際に自ら適切な医薬品や方法を選び、自分で手当てすることを指します。これは健康を維持し、医療資源を有効活用するための取り組みとして、世界保健機関(WHO)も推奨しています。

 

軽微な体調不良や症状に対して医療機関を利用する頻度を減らし、社会全体の医療費負担を軽減することも目的の一つです。
さらに、軽度の病気はセルフメディケーションで対応し、医療機関のリソースを重症者や緊急を要する患者に集中させることも重要です。

自分自身の健康は自分で守りつつ、からだの軽い症状のときは、OTC医薬品などを用いながら適切に実践することが大切です。

 

3.対象となる人

 

セルフメディケーション税制の適用を受けようとする年分に、「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組」を行っている居住者が対象となります。

一定の取組とは、次の取組をいいます。

①  保険者(健康保険組合等)が実施する健康診査【人間ドック、各種健(検)診等】

②  市区町村が健康増進事業として行う健康診査

③  予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】

④  勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】

⑤  特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導

⑥  市区町村が健康増進事業として実施するがん検診

 

※1   申告される方が一定の取組を行っている必要があります(申告される方と生計を一にする配偶者その他の親族の方が「一定の取組」を行っている必要はありません。)。

※2  「一定の取組」に要した費用は控除の対象となりません。

 

4.対象医薬品の範囲

(1)対象医薬品

対象医薬品は、下記の医薬品とされています。

① 医師によって処方される医療用医薬品から、薬局やドラッグストア等で購入できる医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)

② 令和4年以降に購入された医薬品でスイッチOTC医薬品と同種の効能又は効果を有する一定の医薬品

 

対象の医薬品については、当初は医療用から転用(スイッチ)された医薬品として厚生労働省が指定した医薬品「スイッチOTC医薬品」に限られていましたが、2022年以降は「スイッチOTC医薬品」以外も認められるようになりました。

具体的な対象医薬費品の一覧は、厚生労働省ホームページをご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html

 

(2)スイッチOTC医薬品とは

OTC医薬品とは、薬局のカウンター越し(Over The Counter)に購入できる市販の医薬品のことです。

医師の処方が必要だった医療用医薬品のうち、副作用が少なく安全性の高いものを市販薬(OTC医薬品)に転用(スイッチ)したものを「スイッチOTC医薬品」といいます。

 

※セルフメディケーション税制の対象とされる医薬品は、購入した際の領収書(レシート)に控除対象であることが記載されています。

5.所得から控除される額

セルフメディケーション税制では、医薬品の購入金額から12,000円を引いた額が課税所得から控除されます。

なお、控除されるのは、最高8万8,000円までです。

 

6.手続・必要な書類

セルフメディケーション税制の適用を受けるためには、次の書類の提出が必要です。

①   セルフメディケーション税制を適用し計算した確定申告書

②  「セルフメディケーション税制の明細書」

③    対象医薬品を購入した際の領収書

④ 一定の取組を行ったことを明らかにする書類

・ インフルエンザの予防接種又は定期予防接種(高齢者の肺炎球菌感染症等)の領収書又は予防接種済証

・ 市区町村のがん検診の領収書又は結果通知表

・ 職場で受けた定期健康診断の結果通知表

(「定期健康診断」という名称又は「勤務先(会社等)名称」が記載されている必要があります。)

・ 特定健康診査の領収書又は結果通知表

(「特定健康診査」という名称又は「保険者名(ご加入の健保組合等の名称)」が記載されている必要があります。)

・ 人間ドックやがん検診をはじめとする各種健診(検診)の領収書又は結果通知表

(「勤務先(会社等)名称」「保険者名(ご加入の健保組合等の名称)」が記載されている必要があります。)

 

※ 対象医薬品を購入した際の領収書及び一定の取組を行ったことを明らかにする書類は、自宅で5年間保管する必要があります。

 

執筆者:税理士 渕上 肇