ゼロから学ぶ経理入門~その8~ 減価償却について徹底解説

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ゼロから学ぶ経理入門~その8~ 減価償却について徹底解説
こんにちは。
事業を運営する中で、建物や機械、車両などの固定資産を購入することは避けられません。しかし、これらの資産は時間とともに価値が減少していきます。その価値の減少を、適切に会計処理するための仕組みが「減価償却」です。減価償却を正しく理解し、計算方法を押さえておくことで、会計処理がスムーズになり、節税対策にも役立ちます。本記事では、減価償却の基本から計算方法、耐用年数や取得原価の決め方までを分かりやすく解説します。
1.減価償却とは? 基本を押さえてスムーズに計算しよう
(1)減価償却とは?
減価償却とは、時間の経過とともに価値が減少する固定資産を、使用期間にわたって費用として計上する会計処理のことです。
例えば、500万円の機械を購入した場合、これを一度に経費として計上すると、その年の利益が大きく減り、適正な会計処理ができません。そこで、耐用年数(その資産が使用できると見込まれる年数)に応じて、少しずつ経費として計上するのが減価償却の仕組みです。
減価償却を行うことで、資産の購入費用を適切に配分し、利益を正確に計算できます。
(2)減価償却が必要な資産と対象外の資産
〇:減価償却の対象となる資産
・建物・建物付属設備(オフィスビル、倉庫、エレベーターなど。)
・機械・装置(工場の機械、製造装置など。)
・車両・運搬具(営業車、トラックなど。)
・工具・器具・備品(パソコン、デスク、エアコンなど。)
×:減価償却の対象外の資産
・土地(価値が減少しないため)
・10万円未満の資産(少額減価償却資産として一括経費処理が可能)
・20万円未満の資産(中小企業の場合、一括償却資産として処理可能。)
(3)減価償却をスムーズに計算するポイント
☆使用する計算方法を確認する
中小企業は原則「定額法」、一部の資産は「定率法」を選択可能。
☆耐用年数を国税庁の基準に従って決定する
資産の種類ごとに耐用年数が決まっているので、事前に確認する。
☆取得原価を正しく計算する
資産の購入費用だけでなく、設置費用や運送費なども含まれる。
☆少額資産の処理を活用する
10万円未満の資産は一括で経費計上が可能
2.定額法 vs. 定率法:どっちが有利? 違いをわかりやすく解説!
減価償却の方法には 「定額法」 と 「定率法」 の2種類があり、どちらを選ぶかによって税金や利益の計算に影響が出ます。では、それぞれの特徴や違いを理解し、どちらが有利なのかを考えてみましょう。
(1)定額法の計算方法とメリット・デメリット
☆定額法とは?
定額法は、毎年一定額を償却する方法です。シンプルな計算式で、耐用年数を通じて均等に費用計上できます。
【計算式】
減価償却費=取得原価÷耐用年数
【定額法の具体例】
500万円の機械(耐用年数10年)を購入した場合
500万円÷10年=毎年50万円の減価償却費
☆定額法のメリット
・計算がシンプルで分かりやすい
・毎年の経費が一定で管理しやすい
・長期間使用する資産(建物など)に適している
☆定額法のデメリット
・初年度の減価償却費が少なく、節税効果が低い。
・収益が変動する事業では柔軟性に欠ける
(2)定率法の計算方法とメリット・デメリット
☆定率法とは?
定率法は、初年度に多くの減価償却費を計上し、年々減少していく方法です。事業の初期に経費を多く計上できるため、節税効果があります。
【計算式】
減価償却費=期首簿価×償却率
【定率法の具体例】
500万円の機械(耐用年数10年、償却率0.2)の場合
1年目: 500万円 × 0.2 = 100万円
2年目:(500万円 – 100万円) × 0.2 = 80万円
3年目: (500万円 – 100万円 – 80万円) × 0.2 = 64万円
このように、毎年の減価償却費が減少していきます。
☆定率法のメリット
・初年度に大きな経費を計上できる(節税効果あり)
・利益が大きく出る事業の初期に有利
☆定率法のデメリット
・後半の減価償却費が少なくなる
・計算がやや複雑
・事業の長期安定を考えると管理しにくい
(3)どっちが有利? 目的別に考える選択基準
定額法と定率法、どちらが有利かは 事業の状況や目的によって異なります。以下のように考えると、選びやすいでしょう。
☆定額法が向いているケース(事務所の建物、エレベーター、冷暖房設備など。)
・安定した減価償却を行いたい
・長期間使用する建物や設備を購入した
・計算をシンプルにしたい
☆定率法が向いているケース(パソコン、車両、製造機械など。)
・初年度に多くの経費を計上し、節税したい。
・利益が大きく出る事業の初期段階
・短期間で使い切る可能性のある資産を購入した
(4)実際の選択はどうする? 中小企業向けのポイント
法人税法では、基本的に「定額法」が原則です。しかし、一部の資産(機械や装置など)については、「定率法」を選択することが可能です。
☆中小企業にとっての最適な選択
・節税効果を重視 → 定率法
・会計処理を簡単にしたい → 定額法
・建物は原則 → 定額法
特に 利益が多く出る事業の初年度は定率法が有利 ですが、将来的な経費のバランスを考慮する必要があります。
3.耐用年数の決め方とは? 国税庁のルールをシンプルに整理
(1)耐用年数とは?
耐用年数 とは、「その資産が使用できると見込まれる年数」のことを指します。会計や税務では、耐用年数に基づいて資産の減価償却費を計算します。
たとえば、500万円の機械を購入し、その耐用年数が10年と決められている場合、500万円を10年に分けて経費として計上していきます。
耐用年数が短いほど毎年の減価償却費が多くなり、早く経費計上ができるため、税金の負担を軽減する効果があります。逆に、耐用年数が長いと経費計上のペースが遅くなるため、利益の見え方が変わります。
(2)耐用年数の決め方 – 国税庁のルール
耐用年数は、国税庁が定める 「減価償却資産の耐用年数表」 に基づいて決定されます。この表には、さまざまな資産の種類ごとに耐用年数が細かく設定されています。
【国税庁の基本ルール】
・資産ごとに耐用年数が決まっている(例:パソコンは4年、乗用車は6年。)
・中古資産の場合、独自の計算ルールがある。
・耐用年数を自由に決めることはできない
では、具体的な耐用年数の例を見てみましょう。
(3)主な資産の耐用年数一覧
国税庁の耐用年数表に基づき、よく使われる資産の耐用年数を以下の表にまとめました。
①建物の耐用年数
建物の種類 | 耐用年数 |
木造・合成樹脂造 | 22年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
レンガ造・石造 | 38年 |
建物は耐用年数が長めに設定されており、減価償却のペースは遅いのが特徴です。
②車両・運搬具の耐用年数
車両の種類 | 耐用年数 |
普通自動車 | 6年 |
軽自動車 | 4年 |
大型トラック | 5年 |
自動車は耐用年数が短く、早めに減価償却できるのがメリットです。
③機械・装置の耐用年数
機械の種類 | 耐用年数 |
製造業の機械 | 10年 |
印刷機 | 5年 |
エアコン | 6年 |
業種によって耐用年数が異なるため、事業内容に応じて確認が必要です。
④パソコン・電子機器の耐用年数
資産の種類 | 耐用年数 |
パソコン・タブレット | 4年 |
サーバー | 5年 |
プリンター | 5年 |
IT機器は耐用年数が短く、減価償却を早く行えるため、節税効果が高いです。
(4)耐用年数を決める際のポイント
☆国税庁の耐用年数表を確認する
耐用年数は業種や資産の種類ごとに決められているため、事前にチェックが必要。
☆中古資産は特別ルールが適用される
中古品を購入した場合は、独自の計算式で耐用年数を求める。
☆税務メリットを考えて計画的に資産を購入する
耐用年数が短いほど、早く経費計上できるため、節税を意識して設備投資のタイミングを考えるのがポイントです。
4.取得原価の計算方法を理解しよう! どこまで費用に含めるの?
「取得原価」とは、資産を取得するためにかかった総額のことを指しますが、具体的にどこまでの費用を含めるべきなのか迷うことも多いでしょう。本記事では、取得原価の計算方法や注意点をわかりやすく解説します。
(1)取得原価とは?
取得原価とは、資産を取得し、事業で使用できる状態にするまでにかかったすべての費用のことを指します。一般的に、以下のような費用が含まれます。
・購入代金(税抜価格)
・輸送費や運搬費(工場から事業所までの送料など)
・据付費(機械や設備の設置費用)
・関税・消費税(課税対象の場合)
・仲介手数料(不動産や中古機械の購入時など)
・試運転費(工場設備などの動作確認のための費用)
・付随する工事費(電気工事や内装工事など)
単純に購入価格だけを取得原価と考えるのではなく、資産を使用可能な状態にするために必要な費用まで含める のがポイントです。
(2)具体的な取得原価の計算例
①機械を購入した場合
購入価格(税抜):300万円
運送費:5万円
設置費用:10万円
試運転費:5万円
【取得原価の計算式】
300万円+5万円+10万円+5万円=320万円
この場合、取得原価は 320万円 となり、この金額を基に減価償却を行います。
②事務所を購入した場合
購入価格(税抜):2,000万円
仲介手数料:50万円
登記費用:20万円
リフォーム費用(内装工事):100万円
【取得原価の計算式】
2,000万円+50万円+20万円+100万円=2,170万円
ただし、リフォーム費用が単なる修繕費である場合は、取得原価には含めず「修繕費」として処理することがあります。
(3)取得原価を適切に計算するためのポイント
①消費税の扱いに注意する
・原則として、課税事業者は税抜価格を取得原価に含める。
・免税事業者や簡易課税事業者は、税込価格を取得原価に含める。
例えば、課税事業者が500万円(消費税50万円)の機械を購入した場合、取得原価は 500万円(税抜価格) となります。
②付随費用を漏れなく計上する
・設置費や運搬費を取得原価に含め忘れると、減価償却の金額が適正に計算されない。
・特に、海外からの輸入時には関税や輸送費も忘れずに計上する。
③修繕費との違いを理解する
・取得原価に含まれるのは、新たな資産価値を生み出す支出。
・維持・修理にかかる費用は、「修繕費」として経費処理する。
【例】
・エアコンを新規購入 → 取得原価 に含める
・エアコンのフィルター交換 → 修繕費(経費)
(4)取得原価を正しく計算するメリット
☆適正な減価償却ができる(税務調査での指摘を避ける)
☆節税効果を最大化できる(適切に経費計上することで税負担を減らせる)
☆財務管理がスムーズになる(正しい取得原価で資産管理を行う)
取得原価を適切に計算し、事業の財務をしっかり管理することが大切です。
5.おわりに
減価償却は、事業で使用する固定資産の価値を適切に配分し、毎年の経費として計上する重要な会計処理です。正しく理解し計算することで、利益の変動を平準化し、節税対策にもつながります。
【減価償却のポイントまとめ】
★減価償却の基本
・建物、機械、車両などの価値の減少を費用計上する処理。
・少額資産(10万円未満)は一括で経費処理可能
★定額法 vs. 定率法の選択
・定額法 → 年同額を償却、建物や長期使用資産に向いている。
・定率法 → 初年度に多く償却、機械・パソコンなど短期間で価値が下がる資産に有利。
★耐用年数の決め方
・国税庁の「耐用年数表」を基に決定
・中古資産は、独自の計算式で耐用年数を算出する。
★取得原価の計算
・購入費用+設置費+運搬費 などを取得原価に含める
・修理や維持費は「修繕費」として処理する
減価償却の知識を活用すれば、経理業務がスムーズになり、節税効果も期待できます。 事業の状況に応じて最適な減価償却方法を選択し、適切な会計処理を行いましょう!