ゼロから学ぶ経理入門~その7~ 試算表について徹底解説

ゼロから学ぶ経理入門~その7~ 試算表について徹底解説

ゼロから学ぶ経理入門~その7~ 試算表について徹底解説

 

こんにちは。

「試算表」を作成するとき、「借方と貸方の金額が合わない…」「残高試算表と合計試算表の違いがよくわからない…」と悩んだことはありませんか? 経理業務の中でも、転記ミスが多く発生しやすいのが試算表の作成です。

この記事では、「残高試算表」と「合計試算表」の違いをわかりやすく解説し、借方と貸方の金額をしっかり一致させるコツをご紹介します! ミスを減らしてスムーズに試算表を作成できるよう、ぜひ参考にしてくださいね。

 

1.試算表とは?基本をおさらい!

企業や個人事業主が正しい財務状況を把握するためには、日々の取引を帳簿に記録し、それを定期的に確認することが重要です。その際に役立つのが「試算表」です。試算表は、帳簿の記録が正しく転記されているかを確認し、財務状況をチェックするために作成されます。

本記事では、試算表の基本的な役割や作成の目的、そして実際にどのような場面で使われるのかを詳しく解説します。

(1)試算表とは?

試算表とは、企業の帳簿(仕訳帳や総勘定元帳)から転記された各勘定科目の残高や合計額を一覧にまとめた表のことを指します。これは、決算前の段階で帳簿の記録にミスがないかを確認し、財務データを整理するために作成されます。

 

試算表には主に以下の3種類があります

【合計試算表】各勘定科目の借方合計と貸方合計を集計したもの

【残高試算表】各勘定科目の借方残高と貸方残高を示したもの

【合計残高試算表】合計試算表と残高試算表を組み合わせたもの

 

この中でも特に残高試算表は、実際の財務状況を把握しやすいため、多くの企業で活用されています。

 

(2)試算表を作成する目的

試算表を作成する主な目的は以下の3つです

①帳簿の記録ミスを発見する

仕訳帳や総勘定元帳の記録を転記する際、人為的なミスが発生することがあります。例えば、「借方と貸方を逆に記録してしまった」「金額を間違えて転記した」などのエラーがあると、正しい財務状況を把握できなくなります。試算表を作成することで、借方合計と貸方合計が一致するかを確認できるため、記録ミスの発見につながります。

 

②財務状況の把握

試算表を作成することで、企業の資産・負債・資本(純資産)・収益・費用の各勘定の動きを可視化できます。「現金残高はいくらか?」「売掛金の回収状況はどうなっているか?」といった財務状況を確認しやすくなり、適切な経営判断につながります。

 

③決算業務の準備

試算表は決算書(貸借対照表や損益計算書)を作成するための基礎データとなります。決算業務の前に試算表を作成し、記帳のミスがないかを確認することで、スムーズに決算作業を進めることができます。

 

(3)試算表はどのような場面で使われるのか?

試算表は企業の経理業務において、さまざまな場面で活用されます。

 

①月次・四半期・年次の会計チェック

多くの企業では、月末や四半期ごとに試算表を作成し、収益・費用・利益の状況を確認します。これにより、事業の運営状況を把握し、必要に応じて経営方針を調整することが可能になります。

 

②銀行からの融資申請

企業が銀行から融資を受ける際、試算表が必要になることがあります。銀行は企業の財務状況を評価するために試算表をチェックし、返済能力があるかどうかを判断します。特に、最新の試算表を提出することで、リアルタイムの経営状況をアピールできます。

 

③税務申告や監査対応

法人税や消費税の申告を行う際、税理士や公認会計士が試算表を基に財務状況を確認します。また、上場企業や一部の大企業では、監査法人の監査を受けることが義務付けられており、その際にも試算表が活用されます。

 

(4)試算表を作成する際の注意点

試算表を作成する際には、以下のポイントに注意することで、ミスを減らし、正確なデータを得ることができます。

①借方と貸方の合計を必ず一致させる

試算表の借方合計と貸方合計は、必ず一致する必要があります。もし一致しない場合は、仕訳や転記のミスが発生している可能性が高いため、原因を特定して修正しましょう。

 

②自動化ツールを活用する

手作業での転記ミスを防ぐため、会計ソフトやExcelの自動集計機能を活用するのも有効です。会計ソフトを使えば、仕訳帳から自動的に試算表を作成できるため、ミスのリスクを大幅に軽減できます。

 

③定期的にチェックを行う

試算表は月次や四半期ごとに作成し、定期的に財務状況をチェックする習慣をつけることが重要です。これにより、早期にミスを発見できるだけでなく、経営の意思決定にも活用できます。

 

2.「残高試算表」と「合計試算表」の違いとは?

試算表は、企業の帳簿を整理し、財務状況を確認するために作成される重要な会計資料です。その中でも特に重要なのが、「残高試算表」と「合計試算表」です。しかし、これらの違いや使い分けについて正しく理解できていない方も多いのではないでしょうか?

本記事では、それぞれの特徴や作成方法を詳しく解説し、どちらを使うべきかの判断基準についても紹介します。

 

(1)「合計試算表」とは?

①合計試算表の特徴

合計試算表は、各勘定科目の借方と貸方の「合計金額」を記載する試算表です。これは、一定期間の取引の全体的な流れを把握するのに役立ちます。

例えば、「売上」の勘定科目がある場合、一定期間内の売上の合計金額を貸方に記載します。同様に「仕入」勘定科目では、その期間に仕入れた金額の合計を借方に記載します。

 

②合計試算表の作成方法

合計試算表を作成する際は、以下の手順で進めます。

 1.総勘定元帳を確認し、各勘定科目の借方合計額と貸方合計額を計算する。

 2.試算表の借方欄と貸方欄に、それぞれの合計金額を記入する。

 3.最終的に借方合計と貸方合計が一致するかを確認する

 

③合計試算表のメリット・デメリット

メリット デメリット
取引の全体像を把握しやすい 実際の財務状況(残高)が分かりにくい
転記ミスを発見しやすい 決算作業には不向き

 

(2)「残高試算表」とは?

①残高試算表の特徴

残高試算表は、各勘定科目の借方と貸方の「残高(差額)」を記載する試算表です。これは、企業の財務状況を正確に把握するために重要な役割を果たします。

例えば、「売上」の勘定科目があれば、売上の累積残高が貸方に記載されます。同様に、「仕入」の場合、仕入れた金額の累積残高が借方に記載されます。

 

②残高試算表の作成方法

残高試算表を作成する際は、以下の手順で進めます。

 1.総勘定元帳を確認し、各勘定科目の最終的な借方残高と貸方残高を計算する。

 2.試算表の借方欄と貸方欄に、それぞれの残高を記入する。

 3.最終的に借方残高の合計と貸方残高の合計が一致するかを確認する

 

③残高試算表のメリット・デメリット

メリット デメリット
実際の財務状況が分かりやすい 転記ミスの発見が難しい場合がある
決算業務に活用しやすい 取引の流れは把握しにくい

 

(3)どちらを使うべきかの判断基準

①「合計試算表」を使うべきケース

・取引の全体像を把握したいとき

・仕訳や転記のミスを発見したいとき

・日々の会計データをチェックする目的で使用する場合

 

②「残高試算表」を使うべきケース

・財務状況を正確に把握したいとき

・決算業務の準備をするとき

・貸借対照表や損益計算書の作成に役立てる場合

 

③「合計残高試算表」も選択肢の一つ

合計試算表と残高試算表の両方の要素を兼ね備えた「合計残高試算表」を使うことで、より詳しく財務状況を分析することができます。特に、決算期には合計残高試算表が有効です。

 

3.借方と貸方の金額を一致させるコツ

試算表を作成する際に重要なのが、借方と貸方の金額を正しく一致させることです。しかし、日々の帳簿記入や転記作業の中でミスが発生しやすく、試算表が合わずに悩むことも少なくありません。

本記事では、転記ミスを防ぐためのチェックポイントや、試算表作成時に注意すべきポイントを詳しく解説します。正しい試算表を作成し、スムーズな会計管理を行うための参考にしてください。

 

(1)なぜ借方と貸方が一致しないのか?

試算表の借方と貸方は必ず一致するべきものですが、以下のようなミスが原因で不一致が発生することがあります。

 

①仕訳ミス

・借方と貸方を逆に記録した(例:売上の計上を借方にしてしまった)

・仕訳の一部を記入し忘れた(例:仕入は記録したが、買掛金の記入を忘れた。)

 

②転記ミス

・仕訳帳から総勘定元帳へ転記する際に金額を間違えた

・勘定科目を間違えて転記した(例:現金ではなく預金に記録してしまった)

 

③計算ミス

・総勘定元帳の合計金額を試算表に記入する際に計算を誤った

・桁を間違えて記入した(例:100,000円を10,000円と記載した)

 

④入力漏れ・重複記入

・一部の取引を記入し忘れた(例:月末の取引を入力し忘れた)

・同じ取引を2回記入してしまった

 

こうしたミスを防ぐためには、正しい仕訳を行い、転記の際にチェックを徹底することが重要です。

 

(2)転記ミスを防ぐチェックポイント

試算表を作成する際には、以下のチェックポイントを意識するとミスを防ぎやすくなります。

①仕訳の確認

・取引の発生時に正しく仕訳されているかを再確認する

・借方と貸方の金額が正しく対応しているかチェックする

・使用する勘定科目が適切か確認する

 

②転記時のダブルチェック

・仕訳帳 → 総勘定元帳 → 試算表の転記を別の人がチェックする

・転記後に、元帳と試算表の金額が一致しているか確認する。

・手書きの場合は、電卓やExcelでの集計と突き合わせる。

 

③合計金額のチェック

・借方合計と貸方合計が一致しているかを確認する

・各勘定科目ごとの合計金額が正しく計算されているかチェックする

・残高試算表の場合は、前月繰越金額と当月の増減を正しく計算しているか確認する。

 

④記帳ルールの統一

・勘定科目の名称や使用方法を社内で統一する

・取引の仕訳ルールを明確にし、担当者間での認識のズレをなくす。

こうしたチェックを習慣化することで、転記ミスを大幅に減らすことができます。

 

(3)試算表作成時の注意点

試算表を作成する際には、転記ミスを防ぐだけでなく、試算表自体を正しく作成することが大切です。以下のポイントに注意しましょう。

 

①取引の抜け漏れがないか確認する

試算表作成時には、すべての取引が記帳されているかを確認しましょう。特に月末や決算月は、未処理の仕訳が発生しやすいため注意が必要です。

・売上や仕入の計上漏れはないか?

・経費の記録はすべて反映されているか?

・振込手数料や利息などの細かい取引が記帳されているか?

 

②誤った勘定科目を使っていないか?

勘定科目を間違えると、財務データの正確性が損なわれます。特に、「現金」「預金」「売掛金」「買掛金」などの流動性の高い勘定科目はミスが起こりやすいため、しっかり確認しましょう。

 

③帳簿の更新タイミングを統一する

帳簿の更新がバラバラだと、試算表の作成時にデータのズレが生じます。特に複数の担当者がいる場合は、一定のルールを決めて記帳作業を行うことが重要です。

例えば、

・毎日営業終了後に記帳する

・週に一度、経理担当者がまとめてチェックする。

・月末には必ず未記帳の取引がないか確認する

といったルールを作ることで、ミスを減らせます。

 

④会計ソフトを活用する

最近では、クラウド会計ソフトやExcelのマクロ機能を活用して、試算表を自動作成する企業も増えています。手作業による転記ミスを防ぐために、デジタルツールを活用するのも有効な方法です。

 

4.おわりに

試算表は、企業の財務状況を把握し、経営判断を行うための重要な会計資料です。正しく作成することで、資金繰りや利益の管理、決算業務のスムーズな進行が可能になります。

試算表を作成する際には、以下のポイントを意識することが重要です。

 

借方と貸方の金額を一致させる → 仕訳や転記ミスを防ぎ、正確なデータを確保する。
試算表の種類を適切に使い分ける → 合計試算表は取引の流れを確認し、残高試算表は財務状況を把握するのに有効。
自動化ツールやExcelを活用する → 会計ソフトや関数を使って、手作業のミスを防ぐ。
ダブルチェックの習慣をつける → 定期的に記帳内容を確認し、記録ミスを早期に発見する。

 

試算表の正確性を高めることで、財務データに基づいた適切な経営判断が可能になります。たとえば、資金不足のリスクを事前に察知したり、無駄なコストを削減したりといった具体的な対策を講じることができます。

また、融資申請や税務申告の際にも、正確な試算表は企業の信用力を高め、スムーズな手続きを実現します。

試算表を単なる会計業務の一環として扱うのではなく、経営の指針として活用することが、企業の成長と安定につながります。日々の業務の中で、正確な試算表の作成と活用を意識し、より効果的な財務管理を実践していきましょう!