ゼロから学ぶ経理入門~その11~精算表と財務諸表の関係について徹底解説

ゼロから学ぶ経理入門~その11~精算表と財務諸表の関係について徹底解説

ゼロから学ぶ経理入門~その11~精算表と財務諸表の関係について徹底解説

 

こんにちは。

会計や簿記を学んでいると、「損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)」や「貸借対照表(B/S:Balance Sheet)」のつながりが分かりにくいと感じたことはありませんか?そんな時に役立つのが「精算表(せいさんひょう)」です。本記事では、精算表と財務諸表の関係をやさしく解説し、数字のつながりをスッキリ理解できるようになるヒントをお届けします。

 

1.精算表とは?財務諸表とのつながりを理解しよう

決算の時期になると、会計処理や財務諸表の作成に追われる方も多いのではないでしょうか。特に、「損益計算書(P/L)」や「貸借対照表(B/S)」といった財務諸表を作成する前段階として登場するのが「精算表」です。

この精算表は、会計初心者にとって少し難解に見えるかもしれませんが、財務諸表を作る上で非常に重要な橋渡し役を果たします。本記事では、精算表の基本的な役割から、損益計算書・貸借対照表とのつながりについて丁寧に解説していきます。

 

(1)精算表とは何か?

精算表とは、試算表の数値をもとに、決算整理仕訳を加味して、財務諸表を作成するための一覧表です。主に、以下のような構成で成り立っています。

 ・試算表欄(決算整理前の残高)
 ・修正記入欄(決算整理仕訳を反映)
 ・修正試算表欄(整理後の残高)
 ・損益計算書欄(収益・費用の項目を分類)
 ・貸借対照表欄(資産・負債・純資産を分類)

 

このように、精算表は「試算表」から「財務諸表」への変換プロセスを目に見える形で整理してくれる便利なツールです。

 

(2)精算表の役割とは?

精算表の主な役割は次の3つです

①決算整理仕訳の確認と反映
 未払費用、前払費用、減価償却、貸倒引当金などの仕訳を加え、実態に即した数値に修正します。
②損益項目と貸借項目の分類
 すべての勘定科目を、収益・費用(=損益計算書に反映)と、資産・負債・純資産(=貸借対照表に反映)に分類します。
③純利益(または純損失)の計算
 収益合計から費用合計を差し引き、純利益を算出します。この純利益は、最終的に貸借対照表の純資産に反映されます。

 

(3)精算表と損益計算書(P/L)の関係

精算表の「損益計算書欄」では、収益・費用の科目のみが表示され、ここから「当期純利益(または純損失)」が導かれます。

たとえば

 ・売上高:1,000,000円   

 ・売上原価:600,000円   

 ・販売費及び一般管理費:200,000円

であれば、
当期純利益 = 1,000,000 – 600,000 – 200,000 = 200,000

この金額は、そのまま損益計算書の「当期純利益」として記載されます。

 

(4)精算表と貸借対照表(B/S)の関係

一方、精算表の「貸借対照表欄」には、資産・負債・純資産の科目が分類されており、ここに先ほどの純利益が繰越利益剰余金などの形で反映されます。

たとえば

 ・資産合計:5,000,000円
 ・負債合計:2,000,000円
 ・資本金:2,800,000円
 ・当期純利益(繰越利益剰余金):200,000円

 

となり、資産=負債+純資産の関係が保たれるようにバランスが取られます。

 

(5)精算表が果たす「橋渡し」の役割

精算表を使うことで、以下のような点が明確になります。

 ・決算整理前後の数値の違い
 ・科目の分類の誤りを発見しやすい
 ・損益と貸借の関係性を視覚的に理解できる
 ・純利益の算出根拠が明示され、P/LとB/Sのつながりが明確になる。

精算表がなければ、P/LとB/Sの関係が「点と点」に感じられますが、精算表を使うことでそれらが「線」で結ばれるのです。

 

2.損益計算書(P/L)の構造と純利益の算出方法

企業の経営成績を表す指標として、最もよく使われる財務諸表のひとつが損益計算書(P/L)です。日々の取引の結果、会社がいくら稼ぎ、いくら使い、最終的にいくらの利益(または損失)を出したのかが明確にわかるのがこの書類です。

本記事では、損益計算書の基本構造と、純利益(当期純利益)に至るまでの計算の流れを、わかりやすく順を追って解説していきます。

 

(1)損益計算書(P/L)とは?

損益計算書は、一定期間(通常は1年間)における企業の「儲け」を示す表です。
簡単にいえば、「どれだけ売上を上げて」「どれだけ費用がかかって」「結果としていくら利益が残ったか」を数字で示したものです。

構造としては、上から下へと段階的に利益が計算されていきます。

 

(2)損益計算書の基本構造(5つの利益)

一般的な損益計算書は、次のような5つの利益で構成されます。

 ・売上総利益(粗利)
 ・営業利益
 ・経常利益
 ・税引前当期純利益
 ・当期純利益(最終的な利益)

この流れに沿って、順番に詳しく見ていきましょう。

 

①売上総利益(粗利)の計算

まずは、売上高から売上原価を引いたものが売上総利益です。

売上総利益 = 売上高 - 売上原価

たとえば、アパレル会社が1,000,000円分の服を売り、仕入れ原価が600,000円だった場合、

売上総利益 = 1,000,000円 - 600,000円 = 400,000円

これが「どれだけ“仕入れ”より高く売れたか」を示す利益です。

 

②営業利益の計算

次に、売上総利益から販売費および一般管理費(販管費)を差し引いたものが営業利益です。
販管費には、人件費、広告費、家賃、水道光熱費など、日常的にかかる経費が含まれます。

営業利益 = 売上総利益 - 販管費

さきほどの例で、販管費が250,000円なら

営業利益 = 400,000円 - 250,000円 = 150,000円

営業利益は「本業でどれだけ稼いだか」を表す指標です。

 

③経常利益の計算

営業利益に、営業外収益(例 → 受取利息など)を加え、営業外費用(例 → 支払利息など)を差し引いたものが経常利益です。

経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用

【例】

 ・営業外収益:10,000円(受取配当金など)
 ・営業外費用:5,000円(支払利息など)

 経常利益 = 150,000円 + 10,000円 – 5,000円 = 155,000円

これは「通常の企業活動による儲け」です

 

④税引前当期純利益の計算

次に、経常利益に特別利益や特別損失を加減します。
これらは一時的なもので、たとえば土地売却による利益や、災害による損失などです。

税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失

【例】

 ・特別利益:20,000円(固定資産の売却益)
 ・特別損失:10,000円(災害損失)

 税引前当期純利益 = 155,000円 + 20,000円 – 10,000円 = 165,000円

 

⑤当期純利益の算出

最後に、法人税などの税金を差し引いて、最終的な利益である「当期純利益」を計算します。

当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等

法人税が35,000円だとすれば

当期純利益 = 165,000円 – 35,000円 = 130,000円

この金額が、株主や会社の内部留保として残る「儲け」になります。

 

(3)純利益はどこに使われるのか?

この最終的な純利益は、貸借対照表の「繰越利益剰余金」などに加算され、企業の純資産として蓄積されます。また、株主への配当や次年度の設備投資資金として使われることもあります。

 

3.貸借対照表(B/S)における純利益の反映箇所とは?

損益計算書(P/L)で算出される「当期純利益」。この金額は単にその年のもうけを表すだけでなく、次に作成する「貸借対照表(B/S)」にもしっかりとつながっていきます。

特に、純利益が反映される箇所として注目すべきは、純資産の部にある「繰越利益剰余金」です。今回は、「P/Lで出た純利益がどこに行くのか?」という疑問を、貸借対照表の仕組みから丁寧に整理していきます。

 

(1)そもそも貸借対照表(B/S)とは?

貸借対照表は、ある時点における企業の財政状態を一覧で示したものです。大きく以下の3つの構成で成り立っています

 ・資産の部(例 → 現金、売掛金、建物、備品など。)
 ・負債の部(例 → 買掛金、借入金、未払金など。)
 ・純資産の部(例 → 資本金、資本剰余金、利益剰余金など。)

貸借対照表の原則は、以下の式で表されます。

資産 = 負債 + 純資産

この「純資産」の中に、当期の純利益が加わることで、企業の資本が増えていくのです。

 

(2)純利益はどこに反映されるのか?

損益計算書で計算された「当期純利益」は、最終的に貸借対照表の「純資産の部」にある『利益剰余金』の中の一項目である『繰越利益剰余金』に加算されます。

【利益剰余金とは?】

利益剰余金とは、過去から積み上げられてきた「稼いだ利益の蓄積」です。
内訳として、以下のような科目があります。

 ・利益準備金(法律で一定額を積み立てることが義務付けられている部分)
 ・繰越利益剰余金(自由に使える利益の蓄積)

このうち「繰越利益剰余金」が、損益計算書の純利益と直接的に関係します。

 

(3)繰越利益剰余金への流れを具体例で解説

では、実際の数字を使って流れを見てみましょう。

【当期の損益計算書が以下のとおりだった場合】

 ・売上高:5,000,000円
 ・費用合計:4,500,000円
 ・当期純利益:500,000円

この500,000円は、P/Lの最下部に表示されます。そして、この金額は翌年のB/Sに次のように反映されます。

 

【B/Sにおける反映方法】

前期末の繰越利益剰余金が2,000,000円だったとすると、

 ・繰越利益剰余金:2,000,000円(前期末)
 ・当期純利益:500,000円
= 当期末の繰越利益剰余金:2,500,000円

 

このように、「当期純利益」は利益剰余金の増加要因となります。ただし、ここから株主配当金や役員賞与などが支払われた場合、その分は差し引かれた上で反映されます。

 

(4)配当や繰越の調整がある場合

たとえば、純利益500,000円のうち、200,000円を株主配当として支払った場合。

当期末の繰越利益剰余金 = 2,000,000円(前期)+ 500,000円(純利益)- 200,000円(配当) = 2,300,000円

このように、繰越利益剰余金は「純利益 − 配当等」の残額になります。

 

(5)貸借対照表のバランスの取り方

貸借対照表は、「資産=負債+純資産」のバランスを保つ必要があります。
純資産が増えると、その分だけ右側(負債+純資産)が増えることになります。

一方、純資産が増えた理由として、純利益の増加がある場合、資産側も現金や売掛金などの形で増加しているはずです。つまり、P/Lで利益が出れば、B/Sの両側にも反映が生じ、バランスが保たれるというわけです。

 

(6)精算表を使えば関係性がさらに明確に

精算表(ワークシート)を利用すれば、P/Lで計算された純利益がそのままB/Sの繰越利益剰余金に反映される様子を、一覧で確認できます。これにより、仕訳や計算ミスを事前に防ぐことができ、実務上も非常に有効です。

 

4.おわりに

損益計算書(P/L)で導き出された「当期純利益」が、貸借対照表(B/S)の「繰越利益剰余金」としてどう反映されるかを理解することは、財務諸表を読み解く上で非常に重要な視点です。
このつながりを、視覚的・構造的に整理してくれるのが「精算表」です。

精算表を使えば、収益や費用がどう分類され、利益がどこで計算され、それがどのように資産・負債・純資産に反映されるかが一目でわかります。特に、決算整理仕訳の反映や、損益と貸借の項目を正しく仕分けることで、ミスを防ぎ、整合性の取れた財務諸表が作成できます。

初心者にとっては難しく感じるかもしれませんが、精算表を通じてP/LとB/Sの“線”を意識することで、会計の全体像がつながる実感が得られるはずです。
正しく精算表を活用し、財務諸表を“作れる力”を身につけましょう。